SPECIAL INTERVIEW:が〜まるちょば
SPECIAL INTERVIEW:が〜まるちょば
2016.6.14
これまで30ヶ国を超える国々のフェスティバルなどで公演を行い、世界が認めたアーティストと名高いサイレントコメディー・デュオ「が〜まるちょば」が6月16日(木)から東京・天王洲 銀河劇場を皮切りに『が~まるちょば サイレントコメディー JAPAN TOUR 2016』をスタートさせる。 舞台上では決してしゃべることのない2人に、結成秘話や作品にかける想い、今回のツアーも含めた舞台上での見どころについて語ってもらった。
―パントマイムを始めようと思ったのはいつですか?
ケッチ!(以下:ケ):ちゃんとやろうと思ったのはハタチの時からですね。その前は見よう見まねでやっている感じでした。
―何かきっかけってあったんですか?
ケ:パントマイム自体を、一番最初に見たのは、小学校中学年くらいにテレビで沢田研二さんが歌詞の振付でパントマイムでおどけていたようなシーンを見たのが衝撃的で、それからよく真似をしていましたね。
―HIRO-PONさんの始めたきっかけは?
HIRO-PON(以下:H):僕は1人で何かできないかな?と思って、ふとパントマイムって思い立って始めた感じですね。当時は雑誌の「ぴあ」に演劇とか色々なジャンルの中にパントマイムもあって、ここにいけばパントマイムが見れる、というところがあったので、そこでパントマイムを見たり、体の動きが面白いっていうのでコンテポラリーダンスや、舞踏とかを見て、舞踏とかはワークショップを受けたりしていました。パントマイムを始め出してからも、身体表現に必要だっていうのでバレエを週1で2、3年くらい習ったりもしていましたね。
―お二人はどうやって結成することになったんですか?
ケ:僕達は違うところでパントマイムを習っていたので、お互い知らなかったんですけど、始めて5年目くらいの1995年、僕はもう研究所みたいなところを出て1人でやり始めている頃に、先輩がフェスティバルをやっていて、そこで出会いました。その頃は舞台に立つ、というより先輩の手伝いで裏方みたいな感じでした。
―やはり横のつながりが多いんですか?
H:パントマイムの世界って狭いんですよ。そのフェスティバルももともと僕の師匠と、ケッチ!のところの先輩が始めたもので、日本でパントマイムに携わっている人たちはほとんど関わるようなフェスティバルだったんです。それで何年か続いたんですけど、その何年目かに発表の場を設けてもらった時に時間が余ったんで、「誰かやるやついる?」って手をあげたのが僕たち2人だけだったので、そこで即興で一緒にやったのが初めてでした。ただその時に2人でやったから一緒にやっていくと決めたわけではなくて、その後、ケッチ!が誘ってくれたんですよ。一緒にやればお客さんは2倍になるし、1つの場所を借りるのも折半すれば2分の1になるから一緒にやろうよっていう感じで。
―はじめはそういった集客面や運営面のメリットでの誘いだったんですね?
ケ:もっと強かったのは、フェスティバルでたまたま2人でやった後に、若手5人くらいで2回ほど一緒に作品をつくる機会があって、作っていく課程で僕ら二人が面白がって即興でなんかつくっていると、他の3人に怒られたりするんですよ。「まじめにやってくれよ!」って。
H:いたってまじめにやってるんですよ。僕らは。
ケ:他からみるとふざけているように見えたみたいなんですけど、僕らは楽しいって思いながらつくっていて、つくり方の価値観とか、笑いのツボとかも一緒だったんで、これなら一緒にできるんじゃないかなぁ、っていうのが強かったですね。それがなかったらたぶん一緒にやろうって思わないでしょうし、たぶん不定期ユニットみたいな感じで終わっていたと思うんですね。
H:熱意もありましたね。僕はパントマイムを始める時に、1人でやるって決めたんです。やる、って決めてできなかったら他のこともできないだろうって、だから命掛けてやると思っていました。彼から誘われたけど、利便性というか損得勘定だけでやるんだったら意味がないし、それ以上に重要なところがあるので、「命掛けてやりますか?」って聞いたら、「やりますよ」って言ってくれたので、「じゃあ一緒にやりましょう」てなりました。もちろん彼は1人でストリートでやっていて、僕のやっていない場所での経験や、持っていないものも持っていたりということもありました。
―HIRO-PONさんは舞台中心だったんですか?
H:僕の師匠が、舞台でパントマイムをやる方だったんです。舞台でやるパントマイムの意義というか、価値、そういうものを教えていただいて、こんな風にやっていきたいなぁ、と思っていました。ただ、食っていけるとも思っていなかったし、生きてゆく上では教える側にまわったり、営業にいったりとか、本当に自分でやりたいことをやりながらパントマイムの世界で生きてる人達はあまりいなかったですね。今でもパントマイムは誤解されたりするので、そういったところは、僕らが頑張らなきゃいけないのかな、て思ったりもするんですけど。
―なかなかやる人口が増えたり、やり続けていくっていうのは難しいですよね。
H:表立ってやる人がいないと、人口も増えないのかな、と。演劇のためにやっているとか、演劇できないからやる人達もいますし。
ケ:でもパントマイムの世界ってダンサーとかミュージシャンとかに比べたら人数が圧倒的に少ないので、敵も少ないんです。そういう意味では、これを読んでいる若いダンサーさんで興味ある方は、ぜひパントマイムをやったら、チャンスだと思います(笑)。
H:なんのチャンス(笑)?
ケ:自分の知名度をあげる、とか。
―2人にとってはピンチでは(笑)?
ケ:僕ら的にはピンチですけど、パントマイム界の裾野が広がるんだったら良いと思います。ダンスをやっている方は、みんな体の動かし方を知っているので、それプラス僕らがやっているようなことを舞台で観てもらえれば、すごい勉強にもなるだろうし、ダンスにもフィードバックできるし、もしかしたらダンス辞めて、パントマイムやろう! みたいな人もいるかも!?
H:例えばダンスもそうですが、アスリートみたいな感じで考えてるとしたら一生はできない仕事ですけど、バレエとか年配の人のダンスってなんか良かったりしますよね。その違いが分かった人は多分身体表現として、一生の仕事になると思います。それも表に出てできる一生の仕事として。僕らもそれを目指していますし、なんかもうあの動きができないから、もう駄目なんだ、とかっていう風に思っちゃったら表現としても小さくなっちゃうだろうし、逆に若いうちにそういう所に気づいた人達って言うのは、多分とってもいい表現者になるんだろうなぁて思います。
―お二人のショーは小さい子からお年寄りまで共通して笑えますよね?
ケ:そうですね。特にテレビとかでもよくやる「が~まるショー」っていうのは、舞台でも小さい子からお年寄りまで見にきていただいて、親子4代くらいで一緒に帰って行く、みたいなのもありますね。
―万国共通でいけますし。
ケ:多少、マイナーチェンジ、やっていることは一緒なんですけど、順番をかえたり、海外だとウケるところが違うので、そこをちょっと長くしたりだとかします。
―海外の反応はやっぱり違いますか?
H:リアクションの大小が違いますね。
ケ:簡単な例でいうと、下ネタが受ける国が多くて、日本だとちょっとひいちゃうっていうか、え?みたいな、下ネタ?みたいな。
H:海外でもひくところはもっとひきますけどね。アメリカとか。
ケ:あ~アメリカとかは別の意味で怒られるっていうか、教育的な意味でブーーみたいなこといわれたりとかします。
―舞台では色んな作品がありますよね。あれは結成してから少しずつ今の構成になっていったんですか?
ケ:それがほぼ最初から今の構成なんですよ。最初に「が~まるSHOW」っていう、お客さんと一緒に楽しむショーをやって、そのあと「ショートスケッチ」っていう短編作品のようなものをやって、休憩をはさんで「長編ストーリー」をやっていきます。1999年に結成して、2000年の4月に1回目のショーをやったんですけど、その時からほぼ同じ形でやっています。その時、たまたま、スタジオジブリの鈴木敏夫さんが見に来て下さって、ものすごいお褒めの言葉をいただいて、これはガーっといくんじゃないか!って思ったんですけど、鳴かず飛ばずの感じで・・・
―えー、ガーっといってますよ?
ケ:いや、もうちょっといきたいですね(笑)。
―「が~まるSHOW」でお客さんをイジるのはお決まりですか?
H:お決まりですね。そうじゃないと、僕らが楽しくないっていうね(笑)。
ケ:それプラス最初の頃、パントマイムが本当にマイナーでみんなどうやって観ていいかわからないっていうのがあったので、とにかく笑っていいんだよ、声出していいんだよ、っていうのをちょっと煽りたかったんですよね。今でもはじめて見に来られた方は、最初一瞬戸惑うらしいですけど、気がついたら自分もノってた、ていうアンケートをもらったりとかします。
―前半から後半にいくにつれて、少しずつお客さんの空間をならしているような印象をうけました。
H:パントマイムって言葉を最初から、使わなかったんですよ。さっきもいったようにパントマイムって静かにしてなくちゃいけないんじゃないかって思わせたくなかったんで。笑いをとる構成もそうですけど、配るフライヤーもパントマイムっていうだけで二の足をふむお客さんもいるし、パントマイム面白くないじゃん!っていう人は増やしたくなかったので『サイレントコメディー』って書いて、一切パントマイムって言葉は使わずに、フライヤーをつくって宣伝していました。そういった形で戦略じゃないけれど、考えながらやっていました。全体の構成もそのうちの一つで、間口を広げて、お客さんを取り込みたい、という想いはありました。
―笑いどころがわかりやすいので、気楽に観れる感じがします。
H:特に後半の長編なんていうのは、ものを使わないでやっていたり、言葉もないので、説明がないと分からない人は分からないですよね。パントマイムって流れの中で一箇所分からないところがあると、ついてこられないので、あそこがわからなかったから、次からやっていることが全然わからなくならないよう、内容を決めています。だから僕たちが本来つくった上で、ちょっとお客さんの方へ歩み寄って作品をつくるところはあったりします。
―補足をいれすぎちゃうと面白さもなくなっちゃいますよね?
ケ:しゃべればいいじゃんとか、小道具使えばいいじゃんとか、大人数でやればいいじゃんとか、ていう話になっちゃいますからね。
H:結局、パントマイムの良さの一つに、見る側が想像する面白さ、10人いたら10通りのものが見えてくる、10通りの想いが伝わってくる、というのがあるんですけど、説明過多になっちゃうと、そういう部分を排除しちゃうことになるので、そこらへんは死守しないといけない所ではありますね。
―理想で言えば、音響とか照明もいれたくないですか?
H:つくっている段階では、音響や照明がなくてもわかるものをつくります。ただ、僕たちは、音響も照明も装飾の一つで、より良く見せるためにある、と考えています。もちろん作品によって違ったりとしますけど、「長編ストーリー」のような登場人物の考え、想いを伝える、という作品は、音響や照明がなくても伝わるような作品を作っていかないといけないな、と。僕が思うパントマイムの一つだけのルールは『言葉を使わない』なんです。
―やっぱり舞台は映像より会場で実際に見てほしいですよね。スローモーションとか。
ケ:ケ:一瞬観ている人は驚くんですよ。あれ?テレビじゃないのにスローになってるって。一瞬、遅れて「おおー」って声があがったりします。あと今回HIRO-PONが走るシーンがあるんですけど、走るだけでも拍手がおこったりとかしますね。
―けっこう走るシーンありますよね?
H:もうね、今回は酸素を用意していますからね(笑)。
―そこも注目ですね(笑)!
H:あとは会場の雰囲気を見る、感じるっていうのは映像では伝わらないところですよね。特に「が~まるSHOW」なんていうのは、お客さんがつくる空気の中で僕らがやっているところがあるんで。ショーに関して、前半、特に構成的な前半に関しては、空気をつくるっていうのを非常に重要視してたりするので、そういうところを見に来ると勉強になるのかなぁって。逆に休憩をはさんで後半の長編っていうのは、今度は舞台上に空間をつくる、と。僕らは、セットを使わない、言葉を使わない、のはお客さんに舞台の上を見てもらうためです。家のセットや花があって、それにしか見えないのではなく、観る人によって違った見え方になるようにそういったことをしています。だから前半の空気感と、後半の「あ、舞台上にこんなものを感じることができる自分がいるんだ」って発見をしにくるのもいいんじゃないかな、と思います。
ケ:僕らしゃべらないショーなので、活動範囲がものすごく広いんです。言葉に頼らないので、今年に入ってからも中国、フランス、アメリカ、イギリスと短期間で4カ国いって、それぞれの国でけっこう盛り上がって、特にイギリスの番組なんかは、スタンディングオベーションとかしてもらったりしたんですよ。そういうことができるのって、僕らとか、ダンサーさんだと思うんですよね。だからそういうのを目指したい人がいたら「あ、こういうのが海外で通じてるのか!」って観に来てほしいですね。
—最近映画館でお客さんが参加するような応援上映が流行っていますが、今後、映像とかを使って何かやってみたいとかはありますか?
H:舞台上で映像はあんまり考えられないですかね。昔、ちょっと考えたんですけど、これ僕らじゃなくて他の人がやる仕事かなぁっていう想いがあったり、どうせやるんだったらそれを逆手にとってやりたい、というか。今僕らがやってるようなことって、CGでやろうと思えば、なんでもできちゃうじゃないですか?もちろん映像と組み合わせてなんかやろうってありますけど、それみんな考えてるんですよね。あとツアーとか回る場合、映像とかって、いろいろと大変なんですよっていわれて、ちょっと映像でやりたいものもありますけど、あんまり考えないほうがいいのかなっていうのはありますね。
—極力、効果的じゃないものは削ぎ落としている印象ですよね?
H:アナログですよね。最新技術がどうこうっていうのは、もう僕らの仕事じゃないですね。そこはやっぱり機械的なところがあるので、機械に踊らされる僕らもいたりとかするから、なるべくそうじゃなくて、僕らを観てもらって、僕らが面白い、っていうものをつくらないといけないのかなぁって。
—パントマイムを突き詰めたい、という感じでしょうか?
H:昔からパントマイムをどうにかしたい、広めたい!っていう強い想いはあったんですけど、今はどっちかっていうと、自分を育てる方が大事というか、早くしないと人生が終わっちゃうなぁ、年くってきてるなぁっていう想いはあるんで。
—でもやってみたいってことはまだまだあるんですよね?
H:ありますけど、何をやったらいいんだろうっていう想いもあります。全部できないだろうし、今から新しいことをやるのってすっごいエネルギーがいるし、でもやらなきゃって想いと、今迄培って来たことをおろそかにしちゃいけないって想いもあるし、いろいろですね。でもそれは今だから考えられることで、若いときには若いときの考えがあったし、10年後には10年後の考えがあると思うので、それはいいことだと思っています。
―本日はありがとうございました。
パントマイムのソリストとして活躍していた ケッチ!(赤いモヒカン)と、HIRO-PON(黄色いモヒカン)が運命的な出会いを果たし、1999年に結成したサイレントコメディー・デュオ。 「が~まるちょば」とは、ジョージア語で「こんにちは」の意味。言葉や文化を超えたパフォーマンスが高く評価され、"世界が認めたアーティスト"としてこれまでに30ヶ国を超える国々のフェスティバルなどから招待され、その数は200以上にのぼる。1年の約半分を海外公演に充てていたが、近年は国内の舞台公演を中心に活動している。しかし、現在も世界中から数多くのオファーが後を絶たず、海外公演と国内公演の両立を果たしている。が~まるちょばの魅力は徹底して創り込んだストーリー性のある舞台作品と、ライブ感爆発のショーの2つにある。Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人100」に選出される。
が〜まるちょば サイレントコメディー JAPAN TOUR 2016ファン待望の、名作と呼び声高いあの純愛物語が帰って来る!
前回ツアーでの上演から7年、世界が待ち望んだ再演! が〜まるちょばの「街の灯」。
今年も北海道から福岡まで、あなたの心に一輪の花をお届けします。
6月16日(木)~19日(日)【東京】 天王洲 銀河劇場
■ 料金: S席(1・2階席) 5,500円/A席(3階席) 4,800円
※年齢制限 :未就学児童入場不可
■ 主催・企画・製作: ブレインズアンドハーツ
■ お問い合わせ: サンライズプロモーション東京 TEL 0570-00-3337
■ チケット販売所:サンライズオンライン、ぴあ、イープラス、銀河劇場ほか
ツアースケジュール
7月3日(日)【栃 木】 足利市民プラザ 文化ホール
7月8日(金)【広 島】 東広島芸術文化ホールくらら 大ホール
7月9日(土)【岡 山】 岡山市民会館 大ホール
7月10日(日【鳥 取】 とりぎん文化会館 梨花ホール
9月23日(金【大 分】 ホルトホール大分 大ホール
9月24日(土)【福 岡】 キャナルシティ劇場
9月30日(金)【宮 城】 電力ホール
10月1日(土)【福 島】 會津風雅堂
10月9日(日)【静 岡】 長泉町文化センター・ベルフォーレ ホール
10月10日(月・祝)【静 岡】 浜松市浜北文化センター 大ホール
10月14日(金)~16日(日)【大 阪】 森ノ宮ピロティホール
10月20日(木)【北海道】札幌市教育文化会館 大ホール
11月12日(土)【千 葉】 千葉市民会館 大ホール
11月19日(土)【新 潟】 りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館) 劇場
11月20日(日)【埼 玉】 さいたま市民会館おおみや 大ホール
11月23日(水・祝)【高 知】 高知市文化プラザかるぽーと 大ホール 11月25日(金)・26日(土)【愛 知】 中日劇場
12月17日(土)・18日(日)【神奈川】KAAT神奈川芸術劇場 ホール