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[Special Interview]東京バレエ団:松野乃知

2016.4.12

松野乃知
2011年入団。12年、“子どものためのバレエ「ねむれる森の美女」”のデジレ王子に抜擢され、13年「ラ・シルフィード」で古典全幕初主演し、高い評価を得る。「ドン・キホーテ」「オネーギン」「くるみ割り人形」「テーマとヴァリエーション」「カルメン」「エチュード」ほか、マラーホフ版「眠れる森の美女」「ジゼル」などにも出演。

ー今は『ラ・シルフィード』のリハーサルをされているとのことですが、二度目の主演ですね。
 はい、二十一歳のときに初めてこのジェイムズ役を踊らさせていただいて今回三年振りにまた踊らさせていただきます。

ーリハーサルは毎日どのくらいやられるのですか。
 日によって違うのですが、今日は『ラ・シルフィード』のリハーサルは短くて。と、いうのもこの公演の後の五月に海外公演があるんです。それで、ベジャールなどのコンテンポラリー作品をやるので十三時半~十六時半までそのリハーサルをして、そのあと一時間『ラ・シルフィード』の方のリハーサルをしました。
 先にコンテンポラリー作品で一度身体の重心を下げてから、またバレエ作品のために重心を上げ直さないといけなかったので少しハードでしたね。それとリハーサル前には毎日クラスレッスンがあります。

ーバレエを始めたきっかけは?
 僕は一歳からジャズダンスを始めたのですが、そのスタジオのジャズダンスがオールドスタイルだったので、「バレエが基本になるから習いなさい」と言われ、小学二年生からバレエ学校に通い始めたのがきっかけです。

ー辞めたくなったことはないんですか?
 僕はありました(笑)。くじけた訳ではないのですが、元々はミュージカルをやろうと思っていたので小さい頃はこんなに部活もしないでジャズダンスに通える回数も減らしてまでバレエをやる必要はあるのかなと思っていた時期かあります。

ーミュージカルをやりたいと思ったのは何故ですか?
 すごく変わっているのですが、一、二歳ぐらいの物心がつく前から「有名になるぞ」と決めていて。人生最初の記憶も初めてジャズダンスを習いにいったときのことなんです。その当時は踊る事はもちろん、歌う事や演じる事も全て好きだったのでミュージカルの方が全部出来るから楽しいと思っていました。
 ただ、中学生ぐらいからバレエのコンクールに出るようになって全国の男の子達と仲良くなってからはどんどんバレエが楽しくなってきて、バレエへの比重も重くなっていきました。

ー1、2歳で記憶があるっていうのがまず凄いですよね。
 父と母が編集者とライターなんですよ。当時育児本も担当していたみたいで、フラッシュゲームという記憶力に効くゲームをよくしてくれていたみたいで。なのでその頃はすごく記憶力が良かったみたいですね。

ー今おいくつでしたっけ?
 二十四歳です。もう少し若く見えると言われる事が多いですが(笑)。

ー肌がすごく綺麗ですよね。何かケアとかされてるんですか?
 いやいや! でも実は肌が荒れやすいので美容は気をつけてますね。水を沢山飲むことや長時間の入浴は毎日続けています。洗顔料とかが肌に残っていると荒れてしまうので、それを落とす目的で、洗い終わった後に長風呂して汗と一緒に毛穴から出してシャワーで流しています。

ーすごい徹底ぶりですね。松野さんは留学はされなかったんですか?
 ロンドンに留学していました。本当は一年間のはずだったのですが、その時にロンドンの民法が改正されてしまい、ビザがおりなくて半年間の留学になってしまいました。 でもずっとバレエ漬けの生活はすごく楽しかったです。

ーロンドンの食事はいかがでした?
 すごく美味しかったです。ロンドンって色々な国の方がいるので、例えば韓国料理屋さんは韓国の方がやっているなど、現地の味が食べられました。イタリアンとか美味しかったですね。

ー今後東京バレエ団でやりたい事や目指している事などはありますか?
 演じる事が好きなので、このジェイムズもそうですし特に自分が舞台の中で役として生きられるような作品をやっていけたらいいなと思います。その為にもバレエはやはり踊りがベースになるので練習を積んで体に動きを叩き込んでおき、本番では演じる事や表現する事を楽しめればと思っています。

ー大きな怪我などをされた事はありますか?
 怪我はあまりしたことがなくて。昔から気をつけている方だと思います。元から体は柔らかい方ですが、いつもストレッチを長めにしますし、ストレッチの前に絶対マッサージをするようにしています。まず足の指を広げることから始めて、人の体って筋肉と骨がくっついてきてしまうらしいので、それを剥がすようなイメージで全身ほぐしてからストレッチにのぞむようにしています。あと、少しでも痛くなったらすぐに自分でケアするなど日々気をつけていますね。
 ストレッチ前のマッサージ、オススメです!

ー休みの日は何をされているんですか?
 バレエ団は土日が休みなのですが、教えの仕事とかもさせていただいているので一日休みという日はないかもしれないですね。でも空いてる時間にはよく友達と会いますね。

ー食べる量を気をつけたりは?
 いや、沢山食べます(笑)。体重を落としたいと思って食べないと、やはりモチベーションもエネルギーも追いつかなくて。食べた分だけ練習するように頑張っています。

ーバレエ以外に趣味はありますか?
 カラオケにはよく行きますね。洋楽も邦楽も色々歌います。 僕、けっこう歌上手いんですよ(笑)。あと、舞台観劇も好きなのでよく行きますね。

ー沖香菜子さんとは何度も組んでらっしゃるのですか?
 僕が一年目、沖さんが二年目のときに“こどものためのバレエ「眠れる森の美女」”で共演して以来よく組ませていただきました。彼女も僕も練習するのが好きなので、安心して本番に臨めるくらい一緒に練習できるのでありがたいです。やはり本番は怖いときもありますが、それを打ち消してくれるのは練習だけなので。

ーやっぱり本番は怖いんですか?
 そういうときもあります。僕はなるべくその感情を減らすために本番前のルーティーンがあって、本番前にもう一度自分でバーレッスンをしたり、長めにストレッチしたり、両袖に飲み物とタオルを用意しておいたり、「よし、大丈夫!」と思えるところまで準備をしておきます。

ー失敗することはないんですか?
 基本的に本番には強い方ですが失敗することもあります。そういうときは無理にどこかでとりかえそうとするよりも、その時にその状況に自分が演じている人物として対応できるように心がけています。
 その為にリハーサルでこの人だったらこう動くだろうなということを想定しながら練習に臨むようにしています。

ー教える時と自分が踊る時の違いだったり気を付けていることはありますか?
 教えてる時も舞台に立ってる時も割と同じで、どちらもあまり自分に自信を失くさないようにしています。
 常に自信を持って物事をはっきり言うとか。でも教えていると勉強になる事が沢山ありますね。教えを始めたのは三年前なのですが、それまでは自分が先生に求められてる事を百パーセント自分の中で噛み砕けないまま練習することもありましたが、自分が教師の立場を経験して、先生がこう言ったときに自分がどうだから先生はこう言ってるんだな、と明確に想像できるようになりました。
 それが自分の中では大きい事で、それ以外にも教え先で皆さんがすごく頑張っている姿からもやる気をもらいますし、皆に注意した事を自分も次の日のレッスンで気を付けられるし、自分のことにも繋げられるかな、と思います。
 僕は大人の方を教えることが多いのですが、前に教えた事や注意した事を本気でやって下さるのを見ると感動するし、自分も頑張らなきゃなって思います。

ーこれからのご活躍も期待しております。本日はありがとうございました。 東京バレエ団 「ラ・シルフィード」

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