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TOKYO DANCE LIFE CINEMA 01:ムーンウォーカー

2013.10.1

マイケルのパフォーマンスが凝縮された映画、人類必見!

 マイケル・ジャクソン。20世紀のポピュラー音楽に大きな足跡を残したキング・オブ・ポップ。最後のスーパースター。彼は最高の歌手であり、ソングライターであり、ダンサーだった。それだけではなく、音楽プロモーション・ビデオのクオリティを、飛躍的に高めたことでも知られている。
 マイケルが映像の分野で世界中の注目を集めたきっかけは、1983年発表の「スリラー」のプロモーション・フィルムだった。このフィルムは、「ブルース・ブラザース」の監督で、ホラー演出にも定評のあるジョン・ランディスが手がけた。
 通常のミュージシャンのプロモーション・ビデオとは一線を画し、13分の短編映画として製作された。楽曲パートの前後に、前フリとオチのシークエンスが付け足され、ミュージカルのようになっている。ビデオソフトとしても発売され、ビデオソフトを所有することがまだ一般的ではなかった時代に好調な売れ行きを記録した。
 つづく1987年の「BAD」では、硬派な作風で知られるマーティン・スコセッシが演出を担当。スラム出身でありながら自らの状況を改善しようとするマイケルと、現状に甘んじてギャングになることも厭わない旧友との葛藤を見事なダンスパートを挟んで描いている。ちなみにマイケルの旧友役はデビュー間もないウェズリー・スナイプスが演じている。
 一方、1986年にはディズニーランドの3D映画アトラクション「キャプテンEO」にも。こちらは「ゴッドファーザー」のフランシス・コッポラが演出した。「スリラー」、「BAD」も最高だが、この時期のマイケルの集大成ともいえるのが映画「ムーンウォーカー」だ。
 「ムーンウォーカー」は、1987年9月に日本から始まったマイケルの初ソロツアー、”BADツアー”の厳しいスケジュールの合間を縫って撮影された。
 タイトルはもちろん、マイケルのムーンウォークにかけたもの。この映画は、日本では1988年、BADツアーでの再来日を控えた10月に公開された。本国アメリカ国内ではBADツアーの千秋楽に合わせて、クリスマス時期の劇場公開を予定していたが、ツアースケジュール変更のため翌年1月にビデオ発売された。
 マイケルのクレジットは主演、製作総指揮、原案、音楽。BADツアーにおける名演「マン・イン・ザ・ミラー」から始まり、ジャクソン5時代からソロに到るまでの足跡、BADプロモのパロディ、新作PV2本、そして中篇「スムース・クリミナル」で構成されるアンソロジー形式となっている。
 この映画のイメージを決定付けているのはやはり「スムース・クリミナル」だ。上映時間のほぼ半分を占めるこのパートは、もちろん同タイトル曲のミュージック・クリップでありながら、マイケルのアイデアを基にしたSF映画になっている。歌の内容に沿ったハードボイルドな楽曲パートと、悪の秘密結社から子どもたちを救うべく光の国からやってきたマイケルが戦う超展開が同居している。
 マイケルが当時はまっていた「トランスフォーマー」も取り入れて、スポーツカーや、マイケルロボ、さらには宇宙船に変身する無敵っぷりを披露する。マイケルの無邪気さが出ていて面白い。その後、マイケルが歌うビートルズのカバー「カム・トゥギャザー」で大団円。見た者は皆、マイケルを好きになるだろう。
 ちなみにエンド・クレジットで南アフリカ共和国のコーラスグループ、レディスミス・ブラック・マンバーゾがパフォーマンスを披露するが、これも渋くてカッコいい。当時まだ人種隔離政策が続いていた南アフリカのグループを起用した点に、無邪気だけにとどまらないマイケルの真剣さも伝わる。全人類必見の愛に満ちた映画だ。
(文:高橋真吾)

ムーンウォーカー
(1988年/アメリカ映画)
Blu-ray&DVD 好評発売中
発売元:ワーナー・ホーム・ビデオ ©1988 Optimum Productions. All rights reserved.
©2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

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